嵯峨三智子

嵯峨三智子は、昭和30年代は大スターだったが、40年代以後急速に駄目になった女優である。
言うまでもなく日本映画史上の大女優で、まだご存命の山田五十鈴の実子であり、山田と同様10代で映画界入りした。
松竹京都映画が多いが、演技は決して下手ではなく、台詞も悪くない。
ルックスは、下膨れの顔で、西欧的な美人ではないが、本来日本の美人とは、あのような下膨れの、きわめて色っぽさのある女性だろう。

昔々、嵯峨三智子は、「その存在自体がわいせつで、不道徳」とみなされた時代があった。
確かに、あの顔は決して健康的ではなく、前向きな傾向を意味するものではない。
実に不健康、退廃美なのだ。
だが、こうした嵯峨のあり方は、次第に日本映画界の中でも疎まれるようになる。
簡単に言えば、芸能界の健全化であろう。
賤民、河原乞食の末裔たる役者は、いつの間にか歌舞伎役者で大芸術家になった。
いまどき、嵯峨の退廃美に匹敵する女優が日本映画界にいるだろうか。
葉月里緒菜もお騒がせ女優だったが、嵯峨三智子のスケールとは比べ物にならないだろう。

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