京マチ子、死去

京マチ子が亡くなったそうだ、95歳。
京マチ子と言えば、『羅生門』、『地獄門』のグランプリ女優となるだろう。
大映時代には、ありとあらゆる作品に出ているが、私は豊田四郎監督の『甘い汗』に、彼女の資質が良く出ていると思っている。
これは、東宝系だが、京マチ子と桑野みゆきを共演させるために東京映画で作った作品である。

これは水木洋子の脚本で、今日は17歳から一家のために神戸で身を捨てて働いてきた女性で、その意味では一種のプロレタリア小説的なドラマである。
銀座で女給をやっているが、後輩の殻は木村俊恵、「乳が垂れてきた」とバカにされている。
バーテンの小沢昭一の紹介で弁護士小沢栄太郎の愛人になろうとするが、小沢昭一を振った腹いせで、前歴を告げられてしまい、小沢栄太郎の愛人の話はなしになる。
娘の桑野みゆきを始め、母の沢村貞子、名古屋章一家などと大家族で都営住宅に住んでいる。
沢村は、二言目には「私はもうだめだ、ああいやだいやだ」と言っているが一番元気。桑野は定時制高校の女生徒で、同級生は煮豆屋の娘桜井浩子など。
日々の苦闘の中で、京は、昔神戸で愛し合った男の佐田啓二と再会する。桑野は、佐田との間の子なのだ。
旅館で久しぶりの逢瀬を楽しもうとするが、同時にそれを録音して売るアルバイトの誘惑に勝てずにテープレコーダーのスイッチを足先で入れてしまう。ところが、録音ではなく再生に入ってしまい、それは桑野が学校から借りてきた体操の音楽で、すべてはぶち壊しになる。
この辺が、豊田四郎らしいブラックユーモアである。
すると佐田は、これの復讐のように、京マチ子を利用して、朝鮮人の靴屋の山茶花笈と京を湯河原の温泉に泊まらせる。
二人が戻ってくると靴屋は、佐田の指示でパチンコ屋に改装されていて、それを指揮するのは、佐田の愛人の市原悦子で、京マチ子も山茶花も、今はヤクザの佐田に騙されたのである。
いつもは悪役の山茶花が善人で、善人役の佐田が悪役と言うのが面白い。
佐田は、実はこういう悪役がやりたかったのだそうだが、撮影の途中で事故死したので、特撮で補ったところもある。
落語家の春風亭柳朝が出てきた、桑野みゆきに悪さをするや、名古屋・川口敦子夫婦で船橋ヘルスセンターに行くのも貴重な映像である。
池内淳子も、バーの女給で出てくる。

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