『大いなる愛の彼方に』

1960年4月に公開された松竹映画、桑野みゆきが不良少女を演じるが、大島渚の『青春残酷物語』に先駆けている作品である。
当時、『暴力教室』の影響を受けて、東宝や日活では、盛んに不良少年ものが作られていたが、女性映画の松竹としては不良少女ものを作ったわけである。
舞台は、民間の女性更生施設で、少年院の女性版のようになっているが、私立でこのような施設があったかは不明。
施設長は十朱久雄で、息子が渡辺文夫で、天文学の研究者。
収容者は、桑野の他、榊ひろみ、富永ユキなどで、姫ゆり子や瞳麗子のようなやや年増の女性もいる。
そこに新人の教官として高千穂ひづるが来て、彼女は自由で自主的な運営を目指し、浅茅尾しのぶなどの規制重視の方針とぶつかる。
いろいろとあるが、少女らと高千穂が対立した時、彼女は自分も不良少女上がりで、背中には切り傷があることを見せる。
まるで東山金四郎みたいで面白かった。
最後、牧場にピクニックに行き、桑野が行方不明になり、脱走かと大騒ぎになるが、無事戻って来てハッピーエンド。

こういうのを見ると、大島が言うように、桑野みゆきは、もっと可能性があったと思う。
吉永小百合には不良ものはありえないが、桑野は、このスケバンものもやっているからだ。
彼女には、桑パパと言われるステージパパがいて、そこから逃れるために結婚してしまったのは惜しいことだった。

高千穂は、意外にも芝居の上手い女優で、私は、『ゼロの焦点』での彼女の演技は、日本映画史上最初の「シラケ的演技」の女優だったと思っている。

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