『扉はひらかれた』

初めてYouTubeで1本の映画を見た。
大映の監督田中徳三の最後の劇場用映画として知っていて見たいと思っていたが、機会がなく見られなかったが、YouTubeにあったので見た。
POの画面なので、小さくて俳優の顔がよく見えないところもあるが、ドラマは十分わかる。
江戸時代末、奈良の村の庄屋の娘みきは、信心深い少女で、常に南無阿弥陀仏を唱えていた。
中山家に嫁ぎ、ある日、足を怪我した男を直したことから霊を得て、自分に霊力があることが分かる。
「天理王様」を拝むことになり、次第に宗教的な形が形成されるが、興味深いのは中山みきをはじめ、女性のネットワークで宗教的人脈が作られることだ。
新興宗教の特徴の一つに、教祖が女性であることがあるが、天理教もその典型で、また天理は、大本、PLなどの後に産まれる関西の新興宗教のもとになる。
俳優は、中山みきの少女期は、木村理恵で顔を出すが、成人してからは上月佐知子だが、背後からの映像だけで、顔は一切見せない。
当時は、日本の映画では天皇の顔は見せない習慣があったが(新東宝の『明治天皇と日露大戦争』は例外)、ここでも教祖は見せないのだろうか。
大工から信者になり、重要な役目を果たすのは小池朝雄で、その他田島令子など、劇団雲の俳優が多数出ていて、新国劇の若林豪も出ているなど結構豪華なのは、やはり天理のお力だろうか。

最後、明治維新になるが、天理教への警察の迫害は続き、明治20年の立宗50年の祭りへの信者の参加を阻止しようとするが、「捕まってもよい」として無数の信者が集まってきて、門は開かれる。
扉は開かれて、エンドマーク。
日本の宗教映画としては、創価学会の『人間革命』があるが、さすがに田中徳三監督、これも出来は悪くない作品である。

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