『もず』『風流深川唄』

楽しみにしていた『もず』と、ついでに『風流深川唄』をフィルム・センターで見た。

『もず』はビデオで見て感心したのだが、大画面で見てやはり傑作だと思った。
料理屋の女中淡島千景と娘有馬稲子の話で、最後は淡島の旦那だった永井智雄と、有馬が所謂親子丼になってしまうという皮肉な話。

淡島の朋輩に乙羽信子、桜むつ子、さらに清川虹子、高橋とよらの総揃い。
桜の叔母でケチな高橋が最高だった。清川と淡島が息抜きに行くのが船橋ヘルスセンター。

有馬稲子は、田舎の結婚に失敗して上京し美容師になる。
最初の場末の店の女将が口うるさい辻伊万里、銀座の店の主人がいやらしさをみなぎらせる佐藤慶、同僚が岩崎加根子。有馬を田舎から出てきて口説く青年が川津祐介。
最後、淡島が脊髄結核になり、有馬は金がなく永井に身を売るのだが、この頃はまだ健康保険制度が十分ではなったのだね。健康保険制度は女の貞操にも貢献しているわけだ。
脚本水木洋子、監督渋谷実、音楽武満徹。
この『もず』の続編的なのが、水木の脚本で豊田四郎が映画化した京マチ子主演で、佐田啓二最後の映画『甘い汗』だと思う。これも大好きな映画なのだ。

なにしろ有馬稲子がきれい。ビデオで見たよりもはるかに陰影があった。
先日、BSで見た『お吟さま』もきれいだったが、このころが最高だろうね。

見る気がなかったのだが時間がちょうど余ったので、『風流深川唄』も見た。
監督山村聡。川口松太郎原作の新派の18番で、律儀な板前の長次郎鶴田浩二と料亭の娘美空ひばりとの恋物語。
脚本は笠原和夫。鶴田がやはり上手くて美男なのに感心した。
後にやくざ映画に良く出てきた沢謙彰や地獄大使潮健児が出ていた。

この2本は1960年と61年の制作だが、この頃が美南・美女映画の最後なんだね。
1964年の東京オリンピックとテレビの普及。この二つで、映像世界から美男・美女は必要なくなる。

2本とも、約1時間30分。鶴田、有馬の美男・美女でその程度の長さ。
先日見た『いま、会いにゆきます』が、竹内結子で2時間は不当に長い。
竹内結子程度で2時間持たせようという根性が良くない。

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