秋吉久美子の演技


雪で、外に出られないのでビデオを見る。
1974年の藤田敏八監督、秋吉久美子、林隆三主演の『妹』
言うまでもなく「かぐや姫」のヒット曲の映画化。彼らの曲は映画化しやすいらしく、同じ藤田・秋吉コンビで『赤ちょうちん』、さらに同時期に東宝で『神田川』も作られたが、これはあまり大した作品ではなかった。

『妹』は、脚本が当時秋吉をマネージメントしていた女性の亭主の内田栄一で、秋吉を良く知っているので、上手く生かしている。
早稲田の下宿屋、食堂、鎌倉の不思議なブティツク、原宿の歩道での売店や伊丹十三のイラストレーターの変わった家族など、1970年代の雰囲気をとても上手く捉えていると思う。
また、脇役も女性合気道家の吉田日出子、義兄に村野武範、林の食堂に今で言えば「地上げ」を掛けてくるヤクザが、日活の有名な脇役の高橋明、トルコ嬢に片桐夕子その母に初井言栄と、なかなか豪華であり、かぐや姫の山田パンダも警察の鑑識員として出てくる。

だが、なんと言っても素晴らしいのは秋吉久美子の演技である。
本当は、夫(大門正明の声のみ)を事故のような形で殺しているのだが、それを言い出せず、鎌倉の家から早稲田の実家に戻ってきた妹と、それに戸惑う兄の関係。
最後、母親の花嫁衣裳を着て記念写真を撮る。
写真屋夫婦は、藤原鎌足と久松夕子。
そのとき、秋吉は林に向かって
「済みませんでした。お世話になりました」
と言うが、不貞腐れた言い方に実にリアリティがある。
ああいう言い方を始めたのは、彼女が最初だろう。
ともかく秋吉の自然で、生き生きとした演技は本当にすごい。

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