金沢埋立地が出てきた 『絆・松本清張原作』

酒井和歌子主演の『絆・松本清張原作』を見ていたら、金沢埋立地がまだ埋立て直後の荒地と草地だったのが出てきた。
神主から貿易商を始めて多額の借金を負った河原崎長一郎が、妻の宇都宮雅代に頼んで、鶴見川の土手で自分を絞め殺させる。多額の生命保険を賭けていたので、それで借金を返せと言うのだ。
そのために、宇都宮と姉の三戸部スエに、映画館で作品を見ているのと、そば屋でカツ丼にハエが入っているというアリバイ工作をさせる。少々やり過ぎだと思うが、無事工作は成功して河原崎は死ぬ。
青木義朗以下の警察は、他殺として調査するが、犯人はサラ金等だとするが、刑事の一人の中山仁は怪しんでいる。
そこに、保険会社の調査員の酒井が来て調査を始め、次々とアリバイ工作を暴く。
その中で、サラ金社長の今井健二が現れて、酒井を埋立地に連れ込むと、今井が手配した暴走族に酒井を威嚇させる。
そこは、金沢埋立地の南部エリアで、横須賀の浦賀ドックも見える。
1979年なので、新杉田付近はもう土地ができ売却されて工場等ができていたからだろう。
宇都宮は、いつもの松竹映画も通り、戸塚の横浜ドリームランドに働くことになる。
この時期は、まだドリームランドは盛況で、盛んに遊具が稼働している。
特筆したいのは、殺人を手伝わされる宇都宮の姉三戸部スエと夫小林昭二夫妻で、落ちぶれた感じのリアリティがある。
三戸部スエは、もともと俳優座の女優だったが、60年代末の俳優座の分裂事件のとき、思想的な意識はなかったが、当時の俳優座のあり方に疑問を感じ、中村敦夫や原田芳夫、市原悦子らの分裂組に入る。
だから、彼女は、長谷川和彦の映画『青春の殺人者』や黒木和雄の『祭の準備』などに出ているが、これは俳優座分裂の結果の最高例だと私は思う。市原悦子が後に、『家政婦は見た』シリーズで大ヒットをしたのも、俳優座分裂事件の結果である。
最後、河原崎の会社の唯一の社員で実は、ヤクザの組員の中条きよしが、宇都宮をだまして、ドリームランドの観覧車で酒井を殺そうとするが、相当に危険な撮影であり、今では到底できないだろうと思う。
脚本は松竹の吉田剛、監督は水川淳三で、流石のできだと思う。

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