『或る女』

『或る女』をフィルム・センターの小ホールで見た。通常の上映会ではなく、日本映画映像文化振興センター、通称・映文振センターの「観名会」という催事で見た。先月会員になったのだ。上映の後、美術監督・木村威夫さんの講演もあったのだが、土曜の夕方はブラジル語の勉強なので、講演は見ずに横浜に向かう。

『或る女』は、格調たかい名作だがはっきり言って、面白くない。
原作は、映画の主人公・倉知三吉を演じる森雅之の父有島武郎の小説で、脚本八住利雄、監督豊田四郎、音楽団伊久麿の、豊田の前作『雁』と共通するスタッフ、主演女優は京マチ子である。

京が扮する葉子という女が、男から男へと自由に渡り歩く話で、明治30年代では極めて異常な女性である。今で言えば、葉月里緒菜みたいな女だろう。
主人公に同感できないところもあるが、彼女の二番目の夫になるのが森で、彼は肉体的魅力で京を虜にしたらしいのだが、森にはそうした感じはないので戸惑う。
父親の小説のためか、極めて荘重に演じているので、この二人が面白くないのである。

同じ豊田の映画では『夫婦善哉』『猫と正造と二人の女』の森繁久弥があるが、ああいういい加減な人間を嬉々として演じる稀有な役者を得たことが、その後の豊田の喜劇に大きな力になったのだと思った。
森繁久弥の偉大さがよく分かった。

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コメント

  1. 夫婦善哉

    友達と話題になって
    何を・・・?
    それはたった一枚のDVDを買うとしたら
    何にするかって・・・?
    迷いまくった挙句決めたのが
    【夫婦善哉】に決定!
    見たことありますか?
    そうあの有名な織田作之助原作のあのフル~イ映画です
    当然、出演者は、森繁久弥に淡島千景

  2. coco より:

    初めて
    初めまして!
    あたしも、森繁の偉大さを実感してるひとりです

    あの味は森繁だからこそって!
    昔、TVで小林薫がしてて
    上手いなぁって関心したけど
    あれって雰囲気すべて、森繁だった・・・

    あのいい加減さがいいですね!