『悦楽』

大島渚が1965年に脚本・監督した映画。松竹を出た後、『飼育』『天草四郎時貞』の失敗の後、テレビの脚本やドキュメタリーをやっていた大島と創造社が初めて作った映画で、松竹から配給された。
山田風太郎の『棺の中の悦楽』が原作で、愛していた女加賀まり子に裏切られた男中村賀津雄が、ふとしたことで手に入れた大金で、野川由美子、八木昌子、樋口年子ら次々と関係するというもの。

大島は、「当時はまだセックス規制が厳しくて十分に表現できなかった」と言っているが、今見るとかなり商業的な作品であり、その意味では大変興味深い。なにしろ、島和彦という歌手による主題歌まであったのだから、信じがたい。主題歌『悦楽のブルース』は、かなりキャンペーンもやって、そこそこのヒット曲だったと思う。

大島は、難解な映画を作る戦闘的な監督というイメージが強いが、これなどを見ると普通の娯楽映画を撮れる監督だということが分かる。
事実、これは併映が安藤昇の初出演作『血と掟』で、その話題もあって大ヒットし、松竹の外部作品を配給する方針の転換もあり、『白昼の通り魔』『日本春歌考』『無理心中 日本の夏』と続く。だが、『帰ってきたヨッパライ』で「全く意味が分からない」と松竹が激怒して、松竹と大島渚の二度目の縁が切れる。
確かに『帰ってきたヨッパライ』は、かなり難解な作品で、途中で同じシーンをもう一度繰り返したりするなど、実験性の高い映画である。

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