不法占拠の土地の家が登記されていた

港湾局の財産担当係長では、いろんなことがあったが、その一番驚いたのは、市有地の上に不法占拠の家屋があり、その建物が登記されていたことだ。
それは、神奈川の恵比寿町で、ある橋の脇の4隅に市有地があった。
橋を守るために、橋の両側の脇には、防護用の土地が確保してあるのだった。
そこは戦前の埋立てなので、その土地はかなり広くとってあり、戦後、そこに食堂を建てたらしいのだ。

もちろん、私たちが行った時は、完全な廃屋だったが、中に手紙があり、「これをあげます」という孫娘宛てのものだった。
そして、登記所に行って調べると、その建物は登記されていて、どうやら食堂をやっていた女性の息子の名前になっていた。
つまり、そこでおばあさんが食堂を開き、息子は建物を登記したのだ。その息子には孫娘がいて、彼女に建物を上げると言うのだ。
本来、不法占拠の家屋の登記などできるはずはないのだが、戦後の混乱期にはできたものらしかった。
担当者と話して、どうするか考えたが、良い案は出なかった。
「仕方ないから、壊して文句言われたら金を払いますかね」と言い合ったが、私はすぐに横浜国際会議場会社に異動になった。
その後、どうなったかは私は知らない。

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