三好十郎に影響を受けた人

三好十郎は、日本の演劇界に大きな影響を与えたが、実は演劇界だけではない。
それは、吉本隆明と黒澤明である。

吉本隆明は、主に思想的なもので、三好十郎の「非共産党マルクス主義」という立場である。
今では想像もできないが、反体制、反権力は、昭和20年代までは、日本共産党の専売だった。
三好十郎は、もともとアナーキスト詩人で、林芙美子らと同様の立場だった。
その後、三好は共産党へと変わったのであり、非共産党マルクス主義も別におかしなことではなかった。
それは、吉本隆明の「自立思想」へ大きな影響を与えていると思う。

さて、黒澤明だが、『七人の侍』の基になったのは、セカンド助監督で付いた滝澤英輔の『戦国群盗伝』だと書いているが、これは三好十郎の脚本である。
三好十郎は、昭和10年にPCLに入り、脚本を書いている。
この時期、PCLには田中千禾夫、山下菊仁などもいた。さらに日本のシュールレアリズムの開祖滝口修造もいたのだ。
もともと黒澤明は、日本共産党のシンパで特高に逮捕されている。
ただ、その理由は、『蝦蟇の油』に書いてあるように、当時の一般的な左翼運動の高揚によるものではないと思う。
黒澤明が、反体制的になった理由は、彼の父が日本体操学校の幹部だったにも係わらず、大正博覧会の赤字の責任を取らされて同校を首になり、無一文になった不条理から来ていると思う。
滝澤英輔の『戦国群盗伝』は、なかなか面白く、前進座の重厚な演技で、大変に優れた作品である。
黒澤明の『七人の侍』にしても、いきなりできたものではなく、戦前からの積み上げでできた名作なのだ。

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