『青い山脈・続青い山脈』

この余りにも有名な作品は、何度か見ているが、総集編であり、正・続編がきちんと放映されるのは珍しいので、録画した。NHKBS

昭和24年、今井正の最初の映画化である。
その後、東宝で昭和32年に雪村いずみ主演で1回、さらに昭和37年に吉永小百合主演で日活、その後また東宝で2回映画化(片平なぎさ、工藤夕貴の主演だそうだ)されているそうだが、最後の2回の映画化は見ていない。

私は、今井正を高く評価する者で、日本共産党員だったことは別として、彼は風俗や人物描写、人間の弱さ、左翼的人間の駄目さ加減を描くと大変優れていると思っている。
このような明るい作品は、彼本来のものではないように思うが、描写が細かくて面白い。
「戦後民主主義と性の解放」というイデオロギーを高らかに謳い上げるのは、現在見ると恥ずかしい限りだが、その後の青春映画の空虚さとはレベルが違う、切実さがある。
主人公の寺沢新子は杉葉子、六介は池部良、タケノコ医者は竜崎一郎、島崎先生は原節子というベストな配役である。若山セツ子も可愛い。
新子のライバルの松山浅子は山本和子で、後に俳優座に入り、松竹の『女の園』等にも出るが、劇作家矢代静一と結婚し引退する。女優の毬谷友子の母親であるが、なかなか美人だった。
『女の園』では、何か謎めいた上級生を演じている。
ここでも悪役だが、演技も上手い。
この作品は、かの東宝ストの真っ最中に作られ、公開されると大ヒットしたのだそうだ。
確かに、時代の「民主主義と性の解放」を求める潮流にぴったりと合ったのだろう。
その意味では、これほど時代に合った映画も日本映画史上なかったのではないか、と思われる。

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