『桜の森の満開の下』

篠田正浩監督作品で見てなかったものだが、実に馬鹿らしい。
坂口安吾の小説は一種の寓話だったと思う。
それをリアリズムで作られても困る。
鈴木達夫のカメラは素晴らしいが、なんと言っても記録映画出身なので、幻想や寓話には向いていない。
素材を完全に見せてしまうので、ファンタジーにもミステリーにもならない。題材としては、怪談映画の名作『東海道四谷怪談』の中川信夫が監督すればよかったようなものだと思う。
若山富三郎も全くしどころなし。
岩下志麻の狂女のみが光るが、これは地のように見える。
音楽の武満徹も良くない。

こんなつまらい篠田作品をDVDにするなら、先日書いた坂東玉三郎主演の『夜叉ヶ池』を是非DVDにして欲しい。
だが、一部の著作権者に許諾しない者がいるらしい。
著作権保護が、映像文化の発展を阻害する顕著な例の一つである。
過剰な著作権保護には反対せざるを得ないのだ。

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