新国立劇場は本当は・・・『複眼の映像』 橋本 忍

この『複眼の映像』は、橋本忍が、シナリオライターの伊丹万作との出会いから黒澤明との邂逅を始めとして、『羅生門』以下の共同脚本作りの内幕と決裂、最後には黒澤晩年の作品『影武者』『乱』『夢』への批評などで、とても面白い。

だが、この中で、橋本忍も理事を勤めていたシナリオ作家協会が、理事長八住利雄、理事の菊島隆三氏らと共に文化庁に、国立撮影所と国立映画館の設立を要望・運動していたと初めて知った。文化庁長官が今日出海の頃だから30年以上も昔だが。

国立撮影所は、「国立劇場が出来たために俳優調整で大変」と松竹の城戸四郎が反対し、東宝も森岩雄が「国立スタジオのために東宝の砧撮影所でストライキがあった際は、先生方で責任を取ってくれますね」、さらに「国立撮影所を作るなら日活の多摩川撮影所を買収してくれ」等々の各社の自分勝手な意見で消える。
だが、文化庁は調査を進めており、演劇、バレー、クラシック等の諸団体からの容貌もあったので、用地を確保しておいたオペラシティーの新国立劇場が出来たのだそうだ。

もし、国立映画館があったら、どういう変化があったろうか。撮影所は必要ないような気もするが。
現在では、日本国内で制作しても上映できない映画が多数あるのだから、公営映画館は有意義かもしれない。
フィルム・センターは旧作の上映と研究、収集・保存なので、新作の上映・普及は公的施設でやることも意義があるようにも思える。

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