国際的機関について

今は大分減っていると思うが、世の中には世界の国際的機関に行って、世界を股に掛けて働こうと思っている人、若者もいるにちがいない。
私は、横浜市港湾局、さらにパシフィコ横浜、そして総務局国際室にいた者として、「国際的機関に行くのなんてやめておきなさい」と言いたい。
かつては、国連などは、給与がよく非常に高かったそうだ。
また、国連職員には、特権もあり、日本の一流ホテルでも「国連レート」なるもので宿泊できたそうだ。
これは、港湾にいるとき、バンコクのESCAP(国連アジア太平洋経済社会委員会)に、日本の運輸省から出向していた方を通じて、「港湾開発セミナー」をやったときに、彼から言われたことだった。
事前の打ち合せで、彼は何度も日本にきて、品川プリンスホテルに宿泊するとき、私にプリンスホテルに「国連レート」で泊まれるように交渉してくれと言ったのだ。その時は、バカバカしいので、ご自分でおやりになればと言ったが、どうやらできたようだ。
このESCAPもいい加減な組織で、書類がめちゃめちゃなのだ。それを言うと、彼は原因を説明してくれた。

国連は、たぶんどこもそうだと思うが、3種類の職員で構成されている。
一番上は、パーマネント職員、日本の終身雇用のような連中で、定年までいることができる。イギリスや欧米人が多いが、ESCAPではインド、パキスタン人も多い。
次は、テンポラリー職員で、その時のプロジェクトごとに雇用される職員で、研究者のような連中だろう。
その下に、タイではタイ人の職員がいる。
彼らはほとんどアルバイトのような形態だが、それぞれの分野の専門家だそうだ。タイピストはタイプだけ、デザイナーはレタリングだけ、通訳は通訳だけと言うように。
これは、日本が世界ともっとも違う点だが、一人の平の担当者、職員が、プロジェクトの全部を担当するというのは、ほとんどないのだ。ESCAPでタイプや書類を作るタイ人の職員は、このセミナーの全体などまったく知らず、ただ上から言われたことをやっているだけなので、ミスが起きるのである。
こうした構造は、アメリカの民間企業もそうだと私は思う。

いずれにせよ、国際的機関なるものも、そんなものだ。
こうした実態をまったく知らない横浜市のA課長が作った施設に、パシフィコ横浜にある「横浜国際協力センター」がある。
ここには、ITTO(熱帯木材機関)、アメリカ・カナダ大学連合、その他国際的機関が入っている。
そして、「ここは24時間勤務するからホテルとは別にエレベーターを作れ」とのA課長のご意見で、左右両脇に1台づつエレベーターがある。国際機関の実情に無智な課長の言葉のためである。
だが、ここに入っている諸機関の職員は、24時間なんて働いていない。
1991年夏に「国連ピースメッセンジャー都市会議」の時、国連の事務次長がきて私は彼をアテンドしたが、彼は横浜に滞在中は、ジャパン・タイムズを読んで、国際情報を得ていた。

以前、国際室にいるとき、英語研修で、富士宮の国際貿易研修センターに行かされた。そこの事務局の方も言っていた。
「ここは給与は大したことないのだが、休みが多いのが唯一の取柄で、それで彼らはアメリカやカナダから来るんですね。大体1年の半分は休みですからね」 富士宮の地元の職員の方は言っていた。

国際的機関など、そうしたところが実態だと私は思う。
日本の一流企業やNGOに就職する方が、はるかに国際的な仕事ができると思うのだ。

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