『一杯のかけそば』ではなく、『一発のかけそば』であるべきだった。

西河克己の『一杯のかけそば』は、言うまでもなく1988年頃大変に話題となっていた栗良平の『一杯のかけそば』を映画化したものである。当時、「ただ食べさせるのではなく、一発やらせると一杯食わせるそば屋の方が面白い」と言って職場の女性に馬鹿にされたが、まさに『一発のかけそば』にした方が面白い映画だった。

西河によれば、原作は映画にすれば5分で終わるものなので、脚本の永井愛と共同して新派悲劇+動物ものにしたそうだ。

1980年代の札幌のそば屋で起こる話で、池波志乃、柳沢慎吾、レオナルド熊、可愛かずみらが年代毎に変化していくあたりが、西河克己のアイデアだろう。後に、脚本の永井愛は、舞台用に「東京3部作」等の年代記ものを書くが、この映画脚本が影響しているのかも知れない。
西河の言う新派悲劇としてはあまり上手くできていない。

泣かせどころが、大晦日に3人でかけそばを1杯しか食べられない親子の貧しさなのか、1杯でも嫌がらずにそばを出す渡瀬恒彦・市毛良枝夫妻の人情なのか、不明なのだ。その辺が永井の映画脚本家としては、素人のところだと思われる。

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