『ジャン有馬の襲撃』

フィルム・センターの「伊藤大輔と大河内伝次郎特集」
10月からやっていたがなかなか時間が合わず、今日はじめて見に行く。
主演は市川雷蔵で、島原のキリシタン大名有馬晴信をりりしく演じる。
徳川家康は、三島雅夫、その孫の鶴姫が叶順子。
冒頭で、異国の地でスペインの軍隊に銃殺される純情娘が弓恵子。

話は、江戸時代の実話に基づいているようだ。
日本人が中国の居留地の珠州でスペイン人に虐殺される。だが、逆にスペインは反乱の損害賠償を求めてくる。
駿府に護送される家臣で現地の責任者山村聡を救い出した市川雷蔵は、話が全く逆でスペイン人の横暴、特に日本人等を奴隷として使役していることを知り、彼らの救出を決意する。

家康はじめ周囲の者は反対するが、雷蔵は山村と救出に船で向かう。
そして、山村の死を賭しての働きで、日本人奴隷は救出される。
だが、まだ中国人、インド人、黒人等の奴隷がいると聞き、雷蔵は「彼らも救え!」とスペイン船に乗り込み戦い、全員を無事救う。
この辺は、明治初期に横浜で起こり、海外諸国との間で争いになり、大映で映画化もされた「マリア・ルース号事件」を参考にしているのかもれない。
だが、それは雷蔵の支配地からの流配のときでもあった。

鶴姫は、雷蔵につ付いて行くことを申し出るが、雷蔵は一人流されてゆく。
だが、彼はすべての人が自分を見ている喜びと自分が理想に向かって正しい行いをしたことを高らかに叫ぶ。
1959年、「人間皆平等と人類の解放」がまだ理想として信じられていた時代の理想主義映画である。
伊藤大輔も、まだヒューマニズムを素朴に信じていたように見える。

雷蔵の他、家康の家臣本田正純に坂東蓑助(後の坂東三津五郎)と演技巧者で、朗々たる台詞は大変見事だった。

今週で「伊藤大輔、大河内伝次郎特集」は終わり、東京フィルメックスの「蔵原惟繕特集」をはさみ、この次は亀井文夫特集になる。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする