深井史郎『ジャワの唄声』

深井史郎のCDを注文したのは、BSで見た市川右太衛門主演の『風雲将棋谷』を見て、深井の重厚な音楽に引かれたからである。
NAXOSのCDで、デイミトリ・ヤブロンスキー指揮のロシア・フイルハモニー管弦楽団。

深井史郎の曲は、今まで『パロディ的な4楽章』しか聞いたことがなかったが、特に良いとも思わなかった。
だが、1942年に作られ、戦時下でも多く演奏されたという、この『ジャワの唄声』は本当に素晴らしい。
今日の午後に初めて聞き、その後4回も聞いてしまった。
インドネシアのスンダ地方(ジャカルタ付近)の旋律を基本に、アジア的旋律が何度も繰り返され最高潮に至る。
まるで、ラヴェルのボレロのようだが、事実深井は、ストラビンスキーと共にラヴェルに心酔していたらしい。
クラシックには珍しく、アルト・サックスが重要な役割を演じている。
1942年と言えば、昭和17年で、この時期は言うまでもなく、大東亜協栄圏思想が宣揚され、東南アジアの文化がかなり紹介されて、SP盤で『大東亜の音楽』などというシリーズがあった。
また、同時に日本的なものも追求されており、この時期の深井を初め、早坂文雄、伊福部昭等の音楽は、戦後否定され、「12音音楽」のような非民族的なものが良いとされるようになるが、それも1960年代には終わる。

深井史郎は菅原明朗に師事したらしいが、この系列は、早坂文雄、伊福部昭等につながるものである。そして、山田耕作らのドイツ音楽に対し、近代のフランス音楽の系譜である。

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