『緑はるかに』

日活最初の国産カラー映画と言うより、浅丘ルリ子の初出演作品で、カラー方式(コニカラー)に問題があり、完全版はフィルム・センターにしかないので、ほとんど一般館では上映されないので、チャンネル・ネコで初めて見た。

監督・脚本は井上梅次。
話は他愛のないもので、科学者の父を誘拐されたルリ子が、研究の秘密が隠されている緑のオルゴール箱を、少年たちと探すもの。
父は高田稔。
悪漢は植村謙二郎、市村俊行、内海突破などで、彼らは多摩の奥に秘密基地を持っていて、東京ではサーカスをやっている。そこのピエロのフランキー堺が歌う。
また、オルゴールをショー・ウインドーに飾っている骨董屋の親父が有島一郎と、なかなか配役が豪華なのは、プロデューサーの水の江滝子の力だろう。

この映画は、浅丘ルリ子の初出演という他、オーディションで多数の少女が応募し、中には桑野みゆき、山東昭子、滝瑛子、さらに榊ひろみ、あるいは後に黒澤明の『隠し砦の三悪人』でデビューする上原美佐等もいたことでも有名である。
日本中の芸能界を目指す少女に、日活の名を知らしめた上で、このオーディションは大変な宣伝効果があったことになる。
浅丘の歌は、やはりオーディションに応募し、最終選考に残り、その後は少女歌手になった「安田・由紀姉妹」の姉・安田祥子である。
また、岡田真澄のほか、最後のバレーのシーンで北原三枝も出る。
日活としては、ジャリ掬い映画だったが、それなりに力を入れていた。

そして、内容的に最も興味深いのは、浅丘と少年たちが、ほとんど親をなくした子供として描かれることで、これは後に日活アクション映画の主人公の基本的属性になる。
それは、主人公の自立を促すものでもあるが、同時に強い孤独を形成するものでもある。
このころから、浅丘ルリ子には、見るものの心を揺り動かす魅力があるのはすごい。

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