『若い狼』

恩地日出夫の監督デビュー作、ラピュタの星由里子特集で見る。
恩地は、石原慎太郎事件のお蔭で27歳で監督デビューした。
話は、東宝らしくなく、北茨城の常磐炭鉱出の、二人の男女、夏木陽介と星由里子が廃坑となった町を出て、東京に来る。
夏木は、福島の少年院を出ての事だった。
夏木は、何とかまともな仕事で更正したいと願うが、結局やくざの手下になり、新宿の街頭で敵の組員を刺し殺してしまい、今度は刑務所に入る。
星も、パンパンから足を洗ってパチンコ屋に就職するが、すぐにケンカしてやめてしまう。
1961年の制作で、炭鉱の廃山は、まさに同時代の出来事だった。
廃坑となった常磐炭鉱の映像は、貴重だが、それ以外に面白いものはない。
ただ、夏木がバカと思うだけだ。
監督の恩地は、結局この後商業的妥協作だった『あこがれ』、『伊豆の踊り子』、『めぐりあい』が最高の作品だったと言うことになるだろう。
最近の地方の人間の善意を騙して作った『蕨の行』は、最低だった。私が、生涯で唯一映画の途中で劇場を出てきた作品であるのだから。
モノクロで音楽が間宮芳生とは珍しい。武満徹に似た感じだが、武満ほど抒情的ではない。やはり武満はすごい。

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