『翼の凱歌』

昭和18年に東宝で作られた、陸軍の戦闘機隼のPR映画で、脚本が黒澤明、監督は山本薩夫、主演は岡譲二と月田一郎、入江たか子ら。

飛行機乗りだった父が事故死し、その二人の息子が共に軍と民間の搭乗員になり、隼の開発に成功する。
戦意高揚映画だが、アジテーション性は、あまりひどくなく、本当の子供のように育った兄弟が、実は母親の入江の死の時、弟は父親の友人の遺児だったことが分かる。
その後も、母への強い思慕や兄弟愛など、松竹的であり、山本も松竹の影響を強く残していることが分かった。
児童時代の兄弟は、杉裕之と杉幸彦の本当の兄弟で、確か沢村伊きおの息子で、昭和30年代は、テレビ等にも随分出ていたと思う。

成人して、月田の弟は会社(中島飛行機)で試験搭乗をするが、機体の不具合で着陸に失敗する。
だが、岡は、操縦の失敗だとし、今度は自分が乗り、昇降舵の不具合を発見する。
ここで、設計、工作、操縦のどこかが悪いが、「工作の性にすると、工場の士気が落ち、生産に支障が出る」と労働者を庇うあたりが、山本薩夫監督らしい。
音楽は、服部良一で、主題歌も含め、快調。
最後、太平洋戦争に入り、マレー沖海戦等で、隼が活躍する。
戦意高揚的場面は、最後にボーイング機を奇襲するときのみで、意外にも穏当な内容だった。
横浜市中央図書館AVコーナー

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする