成瀬的な大作『海峡』

1982年に、東宝創立50周年で作られた大作、本州と北海道を海底トンネルで結ぶ青函トンネル建設を描くもの。
公開当時、さんざ予告編で見せられて、うんざりし、空疎な大作と思い、見ていなかった。だが、今回見ると意外にも森谷が助監督時代最初に師事した成瀬巳喜男的テイストを秘めた作品だった。

主演は、国鉄の技師高倉健で、トンネル建設のため、予備調査時代から竣工まで、津軽半島先端の竜飛で働き、岡山に住む妻の大谷直子とは長期に別離となってしまう。
一方、高倉は竜飛で、自殺にきた女吉永小百合に出会い、互いに引かれる。
だが、この三角関係は、一向に進展せず、エンドマークまで行ってしまう。
そして、高倉健は、ジブラルタル海峡トンネルの調査に行き、大谷は東京で働き、吉永は竜飛に残る。
とまり、この三角関係は、離婚にも、不倫にもならず、ぐずぐずし決着が付かないまま終わってしまう。まさに、成瀬巳喜男的なのだ。
この辺は、空疎な大作にしたくなかった森谷司郎と脚本の井出俊郎の抵抗なのかもしれない。
南こうせつの音楽は、チープであまり盛り上がらない。
森繁久弥が、全国の土木工事をわたり歩いて来た親父、伊佐山ひろ子がおでん屋の女将で意外にも適役。

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