『戦国群盗伝・総集編』

山中貞雄特集。
元はドイツの文豪シラーの『群盗』、久保栄が『吉野の群盗』として、また原作の『群盗』として、新協劇団で上演されたもの。
久保栄と同じ左翼劇作者の三好十郎による原作、脚本は、梶原金八の名になっているが山中貞雄。
話は、北条氏が支配する戦国の関東で盗賊らが、活躍するもの。
騎馬の疾駆するシーンなど、勇壮なアクションシーンが売り物と書くと、どこかで見た映画と思うだろうが、黒澤明の『七人の侍』に画面は似ている。

ただ、中身は全く違い、前進座の河原崎長十郎や中村鴈右衛門らの盗賊の首領の悪徳地頭や領主との闘いと苦悩がテーマ。
だが、これは明らかに当時の共産党らの左翼運動と、共産党ギャング事件、ハウス・キーパー問題等々の、彼らの非人間性が問題とされている。
それは、三好十郎のテーマであり、同時にかなりシンパシーのあった梶原金八の課題でもあったのだ。
言ってみれば、この『戦国群盗伝』から、思想性を抜いたのが、黒澤明の大傑作『七人の侍』だったと言える。
なぜなら、黒澤は、この滝沢英輔監督の大作の助監督の一人だったのだから。
事実、この作品が戦後1959年に杉江敏男監督でリメイクされたとき、黒澤は、潤色に当たっている。

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