鈴木清順に今二歩及ばず

昼過ぎ、東京に行こうと外に出ると凄い雨。
仕方なく近所で買い物をして戻ると、日本映画専門チャンネルで『狼の紋章』をやっている。
監督松本正志は、デビュー作『戦争を知らない子供たち』がひどかったので(事実1年ほされた)、期待せず見ていたが、意外と面白いので、最初から見る。
学園もので、犬神明という転校少年の志垣太郎は、本当は狼である。
彼は、頭脳明晰なのだが、人嫌いで他人と打ち解けず、クラスのリーダーの伊藤敏孝とも気まずい仲になる。伊藤は、東映で天才子役だったが、この頃は東宝で青春映画に出ていた。女生徒には加藤小夜子や本田みち子などのいつもの連中。
担任の教師安芸晶子は、なぜか志垣に引かれる。
安芸は、市地洋子の名で松竹に出ていたが、この頃は東宝で安芸晶子を名乗っていた。その後、元の市地になる。
そして、学内には暴力番長の松田優作が君臨している。
彼は、暴力団組長河村弘二の息子で、志垣を最初から敵と狙う。
松田の悪役ぶりは凄く、志垣は到底強いようには見えないが、松田が獰猛に強いので、ばかばかしいが面白い。
全体が劇画調というより、完全に鈴木清順の『けんかえれじい』の模倣である。
原作平井和正、脚本は松本の他、福田純、石森史郎。
だが、いまいち画面が飛躍せず、清順のような破天荒な面白さまでは行かないのは、残念。
前作の不評の性か、低予算で、役者は無名の者ばかり、ロケーションも有楽町の東宝のビルの屋上や皇居前広場など涙ぐましい。
最後、志垣は狼に変身し、松田らを殺す。
この狼、ローンウルフ・志垣太郎の孤独は、監督松本正志の孤独のように見える。

やはり鈴木清順は凄いね。

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