『エノケンの孫悟空』


横浜市中央図書館で、昭和15年の『エノケンの孫悟空』を見る。
監督・脚本は、山本嘉次郎。
撮影は三村明、音楽は鈴木静一、装置は松山宗、振付は、益田隆。
話は、『西遊記』の孫悟空だが、ほとんどレビュー映画である。
榎本健一の孫悟空、岸井明の猪八戒、金井俊夫の沙悟浄である。
歌手として、李香蘭、渡辺はま子、服部富子などが出ている。
お姫様は、高峰秀子、その他妖怪として、高勢実乗の他、エノケン劇団の中村是公、如月寛太など。
公開当時、子どもに大人気だったと小林信彦も書いている。
その理由は、戦時体制の中で、歌と踊りのレビュー映画だったからだが、それと同時に、悟空、八戒、悟浄の3人の友情の楽しさもあったのではないか。
妖怪を退治に行くとき、3人は飛行機に乗り、「山越え、海潜り、俺たちは、どんなこともへっちゃらさ・・・」と歌う。
この3人の友情の強さとワクワクする楽しさは、当時の子どもにとっても羨ましいものだったのではないか。
歌の中には、ディズニーの『白雪姫』の小人たちの「ハイホー、ハイホー」も出てくる。
『白雪姫』は、1937年で日本で公開されたのは、戦後の1950年だが、この時期に見た人が東宝にはいたのだろうか。
撮影の三村明は、アメリカにいたこともあるので、情報は得ていただろうが。

歌と踊りは、完全にハリウッド風で、バズビー・バークレー的な華麗な画面もある。
砂漠の場面も出てくるが、一説では中国で撮影したのだと言うが、本当だろうか。
お姫様・高峰秀子の侍女として、タイトルには矢口陽子と御舟京子の名があったが、小さくて画面では確認できず。
矢口陽子は、『一番美しく』に主演し、黒澤明と結婚した。
御舟京子は、加藤治子であり、戦後は加藤道夫と結婚し、文学座に入り、女優として活躍する。
この映画で、今もまだ生きているのは、多分4人で、高峰秀子、山口淑子、加藤治子、そして子役として出ている中村メイ子だけだろう。

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