『戦後落語史』 吉川潮 


正直に言って、今は落語が嫌いである。
それは、ジャズと同じで、どちらも本来は大衆芸能であるにもかかわらず、大芸術のような顔をしているからだ。
その偉そうなところが、嫌いだ。
でも、落語は小さい頃はよく聞いていた。
「孝行糖」の三遊亭金馬は大好きだったし、小ゑん時代の立川談志のラジオ東京での「小ゑんちゃんのおしゃべり」などは、よく聞いていたものだ。

この吉川の本は戦後落語史だが、吉川が自ら断っているように、戦後東京落語史である。
これを読んで、初めて知ったことが三つある。

一つは、林家正蔵が、晩年にその名を返上して林家彦六になったわけ。
五代目林家小さんは、本当は正蔵が襲名すべき順序だった。
だが、三遊亭円生らの反対でできず、小三冶だった小さんになり、その代わりに一代限りという条件で、林家正蔵という大名跡を継がせることになったこと。
だから、林家三平が死んだので、林家正蔵は名を三平家に戻して林家彦六になった。
二つは、晩年の古今亭しん朝の言動が、少々おかしかったこと。女真打などというものも、しん朝が考え、実施したのだそうだ。今や、誰も憶えていないが。
三つ目は、桂小益が、大名跡の桂文楽を襲名していること。
「ぺヤング・ソース焼きそば」が、桂文楽だなんてあんまりだ。
落語家の名前なんて、今やどうでもいいらしい。

この落語史は、「談志史観」なのだが、立川談志も、ガンでもう長くはなく、二度と口座に上がることもないようだ。
そして、今落語ブームなのは、古今亭しん朝が亡くなったので、中堅が頑張ったからなのだそうだ。
立川談志が亡くなれば、その後は完全に春風亭小朝の天下になる。
だが、その後は、誰も分かりはしない。

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コメント

  1. Unknown より:

    Unknown
    吉川潮

  2. ものぐさ太郎 より:

    吉川潮を腐す。
    なにより吉川潮という奴がいやらしい奴だ。
    日刊ゲンダイに偉そうに書いていて、ムカムカする。吉川潮には一言ないんですか?

  3. さすらい日乗 より:

    あるよ
    私も、吉川は嫌味な奴だと思っている。
    いつも、「自分の名は、西条八十が付けた」と言う権威主義。
    以前、芸術祭委員になっていて、文化庁の役人とのトラブルについて書いていたが、実に偉そうで嫌だった。
    この本は、ほとんど襲名と死亡、事件だけの記述なので、不愉快なところは少ない。