『たそがれの東京タワー』

日本映画専門チャンネルの東京特集、1959年、大映で作られた1時間少しの添え物作品。
主演は仁木多鶴子、この人若尾文子に似た憂い顔だが、大スターにはなれなかった。

話は、銀座のお針子で、実は孤児院出身の仁木が、客のドレスを着て身分を隠し東京タワーで、男と出会って恋に落ちると言うもの。
常套的筋書きでは、相手の男も身分を偽っていて、互いに真実を告白したとき、ハッピー・エンドとなる。
だが、男は身分を「今は職工だね」と名乗っているが、本当は自動車会社の御曹司。
つまり、シンデレラなのだ。
職工と言うのも、今は差別用語だが、私の母親はよく言っていて、
「そんなに勉強が嫌いなら、職工にでもなれ!」と怒られた。
今日では、大卒でも現場労働者を志願する者もいる時代である。
さて、映画は勿論、二人は東京タワーで再会し、結ばれる。
東京タワーが幸福のシンボルだった時代である。

仁木多鶴子は、大毎オリオンズの投手だった小野正一と結婚した。
小野は、左の長身投手で、球も速く1960年には33勝を上げ、オリオンズ優勝に貢献したが、その後はあまりたいした成績ではなかったが、184勝と日本プロ野球史上に残る大投手だった。
その小野も、仁木もすでになくなられていると言う。
相手役の男は誰かと思い、タイトルを見直すと、小林勝彦だった。
ここでは、日活の川地民夫みたいな優さ男で、後年のいかつい悪役の小林からは想像できない顔だった。
この変貌は、平泉征なども同じである。

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