つげ義春・藤原マキ夫妻

BSで竹中直人監督の『無能の人』を見て、藤原マキの絵日記文芸春秋のビジュアル文庫本『幸せって何?』を思い出して、読む。
ちょうどつげの『無能の人』や『ゲンセンカン主人』が出た頃だった。
藤原マキは、状況劇場の女優で、『由井小雪』で見たことがある。状況には唯一の普通の女優だった。

この文庫本を読んで、その貧乏暮らしとつげの不安神経症には驚いたが、全体にほのぼのとした生活にはうらやましくさえ思ったものだ。下の娘が、その絵が好きで、よく二人で読んだもので、時には台詞を言い合って演じたものだ。
だが、あたらに学研から出た「増補文庫版」でのつげ義春の談話を見ると、実際はまったく違うものだったらしい。
マキは、実は芸術家志向の大変強い人で、絵本がかなり売れてきても実は少しもうれしくなく、「大人相手の絵を描いて、庶民の意識を変革してやろう」と思っていたと言うのだ。
この辺は、彼女は大阪生まれで、関西芸術座を経て、ぶどうの会、変身などのいたので、当時の新劇の左翼性の影響を強く受けていたのだろう。ほのぼのとした日常などより、ドラマチックくな生活を望んでいたと言うが、これは状況劇場の影響に違いない。

そして、日常生活は、不摂生の極みで、1日にタバコは50本、コーヒー7,8杯、さらに過激な運動による睡眠不足で、胃がんで1991年に死んでしまう。まさに生活習慣病そのものだった。
「太く短く」がモットーだったそうで、その意味では彼女の本望を全うした人生だったようだ。
あらためてご冥福をお祈りする。

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