『死んでみたら死ぬのもなかなか 四谷怪談ー恨』

開演前にプログラムを読むと作者が女性と知り、少々嫌な予感がする。
岸田理生から柳美里、田中澄江に至るまで、女性の劇作家が苦手だ。「生理的」と言うのが、大変困るのである。

作者は韓国の劇作家韓泰淑(ハン・テ・スク)、『四谷怪談』を基にしているが、筋はかなり違う。
お岩、伊右衛門、宅悦は出てくるが、直助やお袖、佐藤与茂七らは出てこない。
時代も変えられていると分かったのは、家に戻って新聞の大笹吉雄の劇評を見てからで、劇中に警官が出てくるので、大変戸惑っていた。警官たちが、「反政府運動」などというので、「あれっ」と思っていたのだ。

明治初期で、元武士の伊右衛門らは、大道で剣術ショーをやっている。
ここは、新時代に適応した仲間を出せば簡単に分かるのである。
例えば、下人だった直助が新政府で出世している、と言う風にすれば、すむことなのだが。
この劇は、そうした客観性が欠けていた。

後半の筋はほぼ同じで、お岩は毒殺され、伊右衛門らも、お岩の恨みで死ぬ。
お岩の朴瑠美は、死んでからは強い女に変身する。
音楽は、太鼓のレナード衛藤。
この人を見るのは、1982年10月の『三波春夫リサイタル』以来だが、よく劇に合わせていた。この人もこの間に、随分苦労してきたのかと思った。
三軒茶屋シアター・トラム

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