無思想な秀才

民主党の代表選挙も明日には決まる。どうやら菅直人首相が優位のようで、前にも書いたが、彼は私の高校の先輩でもあるので、彼には勝って是非首相として活躍して欲しい。
だが、多少の疑問もある。
それは、結局彼は、「無思想な秀才なのではないか」ということだ。
そして、これは都立小山台高校生の特徴であった。

小山台に入学したとき、多くの生徒は、頭が良い上にとてもまじめに勉強し、本質的には良い人間が多い。
だが、文学をはじめ、映画、演劇、音楽等にほとんど興味がないのには、とても驚いた。
あえて言えば、芸術音痴なのだ。
こっちは、ゴダール、トリフォーの本家フランスのヌーベルバーグから、大島渚らの松竹ヌーベルバーグまでを崇拝していた、ませた少年だった。

私は、演劇班にいたが、そこは「落ちこぼれ」の集まりだった。
私の大学時代の友人に、横浜市では、1991年に「ウォーマッド横浜」、2008年には、国連アフリカ開発会議協賛イベントの高校生ミュージカル『やし酒飲み』を一緒にやった田村光男というイベント・プロデューサーがいる。
彼は、私とは同学年で、都立日比谷高校にいて、音楽部でオペラを上演していたが、仲間には連合赤軍事件の吉野雅邦もいたそうだ。
彼も「われわれ音楽部はおちこぼれ集団だった」と言っていた。
要は、都立の上位校の多くも、思想や芸術等に関心のない秀才がほとんどだった。
だから、彼らは東大を頂点とする名門校に入り、そのまま中央官庁や一流企業に入り、優秀なサラリーマンとなり、今や退職になっている。

菅直人は、「市民運動出身」とよく言われるが、その本質は、小山台高校生の特徴である「無思想な秀才」だとと私は思う。
「この数ヶ月に、霞ヶ関の官僚に取り込まれた」と言うのも、もともと高級官僚とは同類で、親和性が高いのだから当然と言うべきである。

その意味で、彼についての一番の疑問は、無思想な秀才の彼が、むしろ、なぜ市川房枝支援の市民運動に参加したのかである。

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コメント

  1. uhgoand より:

    無思想のこと
    代表選では菅を支持する者ですが、菅も市川も無思想であることが共通点ではないか。
    市川の人となりについて、保阪正康氏著『自伝の人間学』でその一端が陳べられている。長いが転記してみる。これを読むと婦人運動だけで、何の思想もなかったように思料される。菅もそこに惹かれたのではないか。

    <市川著も羽仁著もいっこうに感銘がわかないのはなぜだろう。市川著にいたっては、彼女がたずきわった婦人運動の組織や活動が文献として羅列されているだけだ。実際、彼女は婦人の地位向上にひたすら努力を傾けてきたというのだろうが、時代がどのように動こうが、確かに彼女の関心はこの一点に尽きている。>

    また、
    < 市川房枝の自伝は、婦人運動に関心をもたぬ者にはすこしも面白くない。この女性が、議会のなかで一定の地歩を築いたのは、男性の側に「婦人の地位向上にはまったく関心ないが、この女史をあやしておけば女性は黙っているだろう」という計算があったからではないか。市川が直接ナマの自伝を書かなかったのは、この計算に見事に乗せられてしまったからではないか。私にはそう思えてならないのだ。>
    保阪正康氏著『自伝の人間学』より

  2. さすらい日乗 より:

    なるほど
    市川房枝が、そういう人だとは知りませんでした。

    でも、首相が無思想でも、周囲の者が支えてあげれば良いはずで、鳩山前首相のように、独自の「哲学」がなくても良いはずです。

    宮台真司も、菅首相には実際に会って話し失望したようですが、「彼の周囲の議員は、昨年の民主党のマニフェストを作った者が多いので、これからの実行に期待したい」と言っています。
    まあ、もう少し長い目で見るべきだと思います。