『ああ野麦峠』

1979年に山本薩夫監督で作られた大作。前に見てつまらないと思っていたのは、続編の『新緑編』で、これは初めて見たが、とても面白かった。
山本の通俗的と見えるほどの分かりやすい演出力もそうだが、なんと言っても大竹しのぶ、原田美枝子の二大若手女優対決がすごい。
大竹の映画の中でも最上の部類に属すると言って良い。

話は、言うまでもなく山本茂美原作の明治時代の製糸工場の過酷な労働で働く若い女工たちの「女工哀史」である。
飛騨高山から雪の野麦峠を越えて、信州岡谷に女工らがやって来る。
大竹の他、原田、古手川裕子らだが、全員が結局不幸な結末に終わる。
生糸は、当時日本最大の輸出産業で、外貨を稼いでいたが、そのため生糸相場、世界市場の景気に左右され、女工の運命も時代に翻弄される。
その中で、鹿鳴館に象徴される上流階級は、富を得て、日本も近代国家になって行く。
その裏には、薄幸の女工たちがいたことを涙と共に訴え、祈りで鎮魂する映画であり、とても良くできている。

役者も、山本の人脈だろう、主人公の三国連太郎をはじめ、新劇の役者等が多数出て、脇を固めている。
工場を視察に見えられる伯爵が平田昭彦で、夫人は三条泰子、門番のおじさんは長浜藤男、その他福原秀雄らも出ている。
大竹の兄は、地井武男、父は西村晃、母は野村昭子、悪辣な女監督は中原早苗である。

この映画は、仙台で専門学校を作って成功した持丸寛二氏が、新日本映画という会社を作って製作したもので、相当に金を掛けて撮っている。
タイトルで、新日本映画という横長の卵形のマークが出て、「まるで新東宝そっくりだな」と思うと、そのとおり、この会社は、3年後に丸山誠二監督のオーストラリアとの合作映画『南十字星』を作って経営不振となり、その後活動を休止したようだ。

数多い山本薩夫監督作品でも最上の部類の作品だろう。
川崎市民ミュージアム

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