『牝犬』

志村喬特集、1951年の大映作品。
監督は木村恵吾、女優は京マチ子、久我美子、北林谷栄など。
保険会社の重役でまじめ一方の志村喬は、部下の使い込みを調らべに浅草のキャバレーに行く。
そこで京マチ子と出会い、京の兄でヤクザな加東大介に鞄を詐取されかけたことから、逆に会社の金300万円を持ち逃げし、京マチ子の愛人になってしまう。
木村恵吾監督と京マチ子と言えば、前年の谷崎潤一郎原作の『痴人の愛』がヒットしていて、ここでも京マチ子は、肉体的魅力で周囲の男を破滅させる女を演じている。

二人は、東京から逃亡して港町に行き、横領した金でキャバレーをやっている。
志村が、真面目な男から悪役に変わるのが面白いが、その原因は、京の肉体にあり、志村は京マチ子の体から逃れられない。
木村恵吾は、エロい映画が得意で、文芸エロ路線である。

キャバレーの楽団に二枚目の根上淳が来て、彼に京マチ子は惚れてしまい、執拗に迫る。
だが、クラシックの楽団に入ることになり、東京に行ってしまう。

その夜、流しのストリッパーが踊り、楽屋で休んだとき、志村は慰労に彼女に自分で淹れたコーヒーを出す。
と女は、志村の娘でバレリーナを目指していたが、志村の不行跡に絶望した母親北林の死でストリッパーに落ちぶれた久我美子だった。
この辺の因果物劇は、脚本の成沢昌成のセンスである。
最後、根上を追って行く京マチ子を刺殺した志村喬は、港の防波堤を歩み、自死することが暗示されて終わる。

この題名の『牝犬』だが、以前は野川由美子主演で『三匹の牝猫』や『賭場の牝猫』など、性的欲望に駆られる女を、犬、猫にたとえる題名があったが、近年は見ない。確かに野川由美子は、猫のような目だったが。
やはり、人間のごとく、「犬権」や「猫権」の尊重から来たものか。

キャバレーの前の通りの鉄道の踏切のセット撮影が上手い。
この映画も、当時の作品の常で、ほとんどが撮影所のセットで撮影されていた。
日本映画専門チャンネル

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コメント

  1. なご壱 より:

    Unknown
    指田さん、いつも楽しく拝見しております。この映画は、面白そうですね。また志村喬の大映出演も珍しいですね。
    一つだけ北林谷栄ではないでしょうか。

  2. さすらい日乗 より:

    直しました
    有難うございます。
    ご指摘の通り訂正しました。
    私も、こんな映画があるとは知りませんでした。
    やはり、志村喬は上手い。