「大型爆撃機が完成」

最近、鎌倉街道の横浜橋バス停のそばに出来た古本屋に行くと、『夢声戦争日記』があった。
1・2巻は、以前から持っていて、中公文庫版のは前に阪東橋の古本屋にあり、そのとき買わずにいるとすぐになくなっていた。今度は全5冊で800円と格安だったので買う。
第5巻の昭和20年6月24日には、こう書かれている。

  志賀さんの話によると、日本に六発の爆撃機が出来ていて、既に米本土迄の往復試験に 成功したという。松根油で飛ぶんだそうだ。しかもこれが500機揃って待機しているとい う。本当ならば実に嬉しき限りである。吾等が舐めたB29の味を、ニューヨーク、ワシン トンなどの市民に味わせてやりたい。
  だが、先夜宮田一家と話した時は、日本の飛行機は現在のところ片道がやっとこさだと いう説であった。B29でさえサイパンから辛うじて飛んで来られるのだから、果たして日 本の六発などが太平洋往復可能であろう、甚だ疑わしい。
  或る将軍が某席に於いて、今に国民を有頂天にさせる快事があると言ったが、この六発 のことか?
 
全く現実と逆の噂であるが、ここには日本人の願望が反映されている。
今、ネットの掲示板で流布している「海上保安官殉職」も、これに似た願望ではあるまいか。
中国人は、冷酷非道な連中で、モラルも何もない、と言う。しかし、今や経済的、政治的にも強大な力を持って日本を脅かしているという恐怖心。

徳川夢声は、当時の芸能人の中では、群を抜いたインテリだったが、このレベルだった。
『夢声日記』は、やはり喜劇人だった古川ロッパの日記と同様とても面白い。
今、ロッパ日記の『戦後編』を読んでいるが、恨みつらみと嘆きだけだが、実に面白い。

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