『真っ向勝負のスローカーブ』 星野伸之(新潮新書)

2002年、阪急、オリックス、阪神で活躍した投手の星野が引退したときに書いた本である。
世田谷パブリックシアターに『春琴』を見に行ったとき、三軒茶屋のブックオフで買った。

「球界の玉三郎」と言われたひどく華奢な体で、日本ハム戦で捕手の中島聡が素手で取ったほど球の遅い星野だったが、通算176勝、三振奪取2041個で、それぞれ歴代記録の34位と16位なのである。
三振は、高橋一三の1997よりも上、勝利も169勝の高橋直樹よりも上回っている。

中には、「一流投手は、球種が少ない」の貴重な意見が書かれている。
確かに、金田や江夏のストレートとカーブ、松坂のストレートとスライダー、野茂のストレートとフォークのように、意外にも一流投手の球種は少ない。
星野は、球種が少ない方が、練習が容易なので良いと書いている。
彼は、ストレート、カーブ、フォークを、練習ではそれぞれの後に投げるので、3種類でも6パターンがあるように、組み合わせは少ないのが良いのだそうだ。

私が、星野をよく見たのは、阪神に来てからだが、モーションで腕が下に下がって球が完全に見えなくなり、そこから手首を捻り、上に振りかぶって投げる。
その捻り方が、大変に微妙で、それで球を投げ分けていた。
打者にすれば、その腕が下がったときを凝視していては、タイミングが取れなくなるはずで、実に上手いものだと思った。

この腕と捻りの使い方は、今はソフトバンクの左腕和田投手もやっていて、球種の見極めが大変難しいように見える。
球の速さと言っても絶対的なものではなく、ただ150キロ出れば良いというものではないのである。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

コメント

  1. uhgoand より:

    ベースボールの数量化
    日本の野球も無意味なスピード信仰はいい加減やめにしてもらいたい
    野球(投手)はスピード競争ではない
    150キロ/毎時を超えることが何かのステータスのごとき扱いは見るに堪えない
    特にテレビ スポーツ新聞は狂つている
    MLBでは150キロ/毎時はあたりまえで いまは160~170キロの時代に入つてゐ スピード競争の視点はない
    ボックス・スコア表記法など野球数量化を考案し「ベースボールの父」といわれたヘンリー・チャドウィックの説を掲げる
    『三振は投手が優れたことを意味しない 貧打を意味するのみ』
    『投手とは スピードに頼らなければ頼らないほど 効果のでるポジション』

  2. さすらい日乗 より:

    要はタイミング
    そのとおりですね。
    昔、南海に藤田学と言う投手がいた。新人王をとり、通算で72勝している。
    野村の前に南海の監督をやった広瀬が言っていた。すでに藤田が技巧派に変わっていたときのことだが。
    「彼は変化球を投げるときも全力で投げている。それで初めて打者のタイミングをはずせる」
    逆に、南海、大洋で活躍した森中の大洋時代の試合を川崎球場で見たことがあります。相手は、阪神。
    そのとき彼は、全力投球のときは変化球で、軽く投げたときはストレートでした。
    要は、どのように打者のタイミングをはずすかだと思います。