マリア・シュナイダー死去

昨日の夕刊によれば、フランスの女優マリア・シュナイダーが死んだそうだ。58歳。
この10年くらい、ずっと病気療養中だったというが、やはりエイズだろうか。

彼女は、マーロン・ブランドとのセックス劇の『ラスト・タンゴ・イン・パリ』で有名になったが、私たちにとっては、なんと言っても1975年のルネ・クレマンの映画『危険なめぐり逢い』である。

彼女は、ローマに来ている若い画家生に扮し、金持ちの豪邸で子供のベビー・シッターに行き、そこで誘拐、脅迫事件に巻きこまれる。
例によってクレマンの語り口は少々分かりにくく、初めは多少戸惑うが、話は難しいものではないことは次第に分かる。
その中で、彼女はじっと事件の進行に耐え、自分と子供の救助の道を探して行く。
決して女性らしくない、ボーイッシュな表情で、不条理な状況に耐えている姿が素晴らしい。
また、フランシス・レイの音楽も実に抒情的。

最後は、逆転、また逆転で意外な結末になるが、彼女は、また恋人との若く貧しい生活に戻っていく。
1970年代の若者の姿がよく表現されている作品だと思う。
日本で言えば、藤田敏八監督、秋吉久美子主演の『妹』のような感じがある。

ルネ・クレマンは、日本では『禁じられた遊び』で、芸術派監督のように見られているが、本質は日本で言えば、井上梅次や舛田利雄のような職人派の監督だと思う。
近く、ビデオで持っている『危険なめぐり合い』を再見して、マリア・シュナイダーの若い死を悼むことにする。

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