『幻の殺意』

衛星劇場の日の当らない映画特集。
ご贔屓の沢島忠監督だが、テレビの「火曜サスペンス劇場」レベルの作品。

高校1年の中村勘九郎(現勘三郎)は、父親で高校教師でラクビー部コーチの小林桂樹、母親の若尾文子と幸福な家族だった。
だが、ある日、勘九郎が新宿のヤクザを刺殺し、犯行を自供する。
信じられない小林は、事件を調べ、意外な結末に至る。
若尾が、と言うのが最大の謎だが、いずれにしても「火サス」のレベル。
沢島も、1970年代は、こんなものを作っていたのかと驚く。
言うまでもなく、沢島は、中村錦之助主演の『一心太助』シリーズに見られるように、快調なテンポとリズムで見るものを乗せていく作風で、こういうじっくりとサスペスを描くのは得意ではないのだろう。

配給は東宝だが、製作はコマ・プロダクションで、当時コマ・スタジアムの松岡辰郎社長が映画製作に大変乗り気で、作ったとのこと。
また、当時は東宝が大変路線見失っていて、外部プロダクションへの制作発注を増やしているときだった。
沢島は、新宿コマで美空ひばりの芝居の作・演出をやっていたので、その線で監督をしたのだろう。
撮影は、岡崎宏三で、まだ淀橋浄水場の跡のレンガ造り等が背景に出てくるのは、貴重な映像である。
後に、日活ロマン・ポルノの常連になる、粟津號が、クリーニング屋で出ていた。

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