『明日の幸福』

こんな映画が作られていたなんて知らなかった。
『明日の幸福』は、中野実の脚本で、1954年に劇団新派で上演され絶賛された劇である。

経済界の大物小堀誠の家で起きる、家宝の埴輪をめぐる騒動。
小堀の妻が水谷八重子で、その息子で家庭裁判所判事が上原謙・木暮美千代夫婦。
さらにその子小泉博が、新妻の久我美子と新婚旅行から戻って来たところから始まる。
お手伝いさん(当時の言い方で言えば、女中)が賀原夏子ら3人もいて、運転手もいる富豪である。
何度か出てくるお屋敷の入り口は、他の映画でも見たことがあるが、鳩山前首相の母の石橋家だろうか。

小堀のところに政界ゴロ、院外団のような大矢市次郎が、「小堀が大臣候補になった、必ず入閣する」と大騒ぎで来る。
だが、それはガセねたで、小堀は入閣できない。
お礼にと、口利きをしてくれた「大物議員への贈答」と、蔵から埴輪を出したとき、木暮は箱を落としてしまい、埴輪の足が折れてしまう。

そこから埴輪騒動が始まり、最後は3人の女性がみな絡んでいたことが分かる。
そして、水谷は言う。
「私も若いときは、青鞜の女性だったのだ」と。
ここで、言われていることは、家と夫に縛られている女性の自立である。
木暮と水谷は言う「こんな家は出ましょう」
まるで『人形の家』のノラだが、女性が家と夫に従属している象徴が埴輪であり、人形であるわけだ。

勿論、二人は家を出ない。その代わりに木暮は、埴輪を庭に叩きつけて壊す。
そして、小堀にも最後は幸福が来る。

とてもよくできている芝居で、また水谷と小堀、さらに大矢は、舞台でも演じていて、実に上手い。
小堀誠の頑固親父ぶりが上手い。これを見ると、彼の息子で次郎長三国志の小堀明男が大根なのが良く分かる。
また、賀原夏子ら女中の描き方も面白い。
監督瑞穂春海、脚本長瀬喜伴
衛星劇場

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