『欲』

五所平之助は、日本映画史に残る大監督だが、ときどき「何でこんなものを作ったの」と思われる作品もある。
1957年の松竹での『欲』も、そんな笑えない喜劇である。

舞台は、八雲市となっているが、松江のようだ。
医師の伴淳三郎は、不老不死の薬の研究・開発に夢中になっていて、妻の轟夕起子、娘の富士真奈美とは別居状態。
新人の新聞記者渡辺文雄が赴任してきて、伴淳の他、三国連太郎、森繁久哉らが、欲に絡んでの騒動に巻き込まれると言う筋書き。
だが、この不老不死の薬と言うのが、人の睾丸から抽出するというもので、そんなことはありえないので、初めからバカばかしく見え、なぜこんな嘘に皆が大騒ぎするのか、と思えてしまうのだ。
伴淳をはじめ、須加不二男ら、片側の睾丸を摘出した連中が、その性で、歩くときびっこを引くのが唯一ギャグとして笑えるくらい。
見所としては、富士真奈美がまだ肥満体ではなく、小柄な美人として出ていること、NHK所属になっていた。
音楽は、いつもの芥川也寸志で、五所の同じく監督作品『煙突の見える場所』によく似た曲が使われている。
衛星劇場

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