安部公房と中村とうよう

フィルム・センターで小林正樹監督の『壁あつき部屋』を見る。
戦争犯罪人の内、政治犯のA級以外のB・C級戦犯が、池袋の巣鴨拘置所、スガモ・プリズンに収容されていたときの話である。
撮影されたのは、1953年だが、米軍に配慮して3年後の1956年に公開されたもの。
松竹大船で撮影されたが、新鋭プロダクションとなっており、主人公格の浜田寅彦はじめ、永井智雄、下元勉、内田良平など、新劇の俳優が多く、それに松竹の三井弘治、岸恵子、小林トシ子、望月優子、さらに三島耕、北龍二などが参加した作品。
端役では、武内亨、井上昭文、佐野浅夫らも見える。
話は、B・C級戦犯が、ほとんど濡れ衣で、いかに不当な扱いを受けて来たかを描くもの。
一応、庶民の立場から反戦を描く小林正樹らしい題材である。

脚本は、安部公房で、なぜ彼が松竹のシナリオを書くようになったのは分からないが、考えてみれば安部公房も自殺死である。
安部は、小説はもとより、映画の脚本、演劇の作・演出と大変多彩な才能を示した。
だが、突然自殺した。彼の場合は、女優の山口果林との恋愛沙汰の果てだが、中村とうようさんにはないようだ。
とうようさんも、音楽評論、雑誌の創刊、翻訳、イベントの企画など、これまた大変な才能を発揮した。
才能に溢れている方は、それゆえに「生き急ぎ」、自分からの死を選ぶものなのだろうか。
われわれ、凡人には、及びもつかないところである。
フィルム・センター

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コメント

  1. 闘いうどん より:

    Unknown
    安部公房って、自殺だったのですか?

  2. さすらい日乗 より:

    自殺と言われています
    詳しいことは分かりませんが、女優の山口果林に結局はふられて死んだと言われています。
    川端康成もそうでしたね、若いお手伝いさんに断られて自殺した。
    中村とうようは、どうやら病気が原因のようです、ひどく最後の杖をついてやせた写真を見ると。