『密航0ライン』

1960年、

小高雄二と長門裕之の新聞記者同士の特ダネ競争の中で、香港への密航ルートを暴く新聞記者が主人公のアクション映画。
冒頭に、横浜の大岡川周辺に当時あったホテル船でのアクションが描かれる。
多少、映画美術的に造作してあるが、基本的に当時のものであり、まるでアジア的な横浜の港湾の状況を記録する貴重な映像である。
都橋の飲食店のセンターができるのは、この後、東京オリンピックのためのスラム・クリアランスの結果で、今やそんなことも皆忘れているだろう。

小高雄二の恋人が、後楽園球場のアナンサーの清水まゆみで、長門裕之の妹。
東京の霞町の地下にある外人クラブや鎌倉の整形美容医院などが出てくる。
その美人院長に東恵美子、さらに日本海側の港の飲み屋の女に、初音言栄と青年座の女優が出ている。
外人船員の嵯峨善兵や野呂圭介、榎木兵衛、さらに娼婦の千代郁子など、日活の常連役者たち。

鈴木清順の画面作りは、ここでもユニークで、常に「あっ」と思わせて、最後まで飽きさせない。
併映の『事件記者・影なき男』と同様、新聞社のキャップが、永井智雄で、テレビの『事件記者』そっくりの役をこなす。

『事件記者・影なき男』は、永井智雄の他、滝田祐介、原保美、大森義夫、山田吾一、高城淳一、園井啓介とテレビと同じ俳優で、加わっているのは、日活の沢本忠雄と丘野美子くらい。
だが、このシリーズが進むと共に、日活の俳優が多くなり、また東京映画でも作られたので、テレビとの同一性はなくなって行く。

和気藹々と取材競争をしている記者連中、さらに良好な関係の警視庁と言え、ともかく日本人が警察やマスコミを単純に信じていた時代の産物と言うべきだろう。
川崎市民ミュージアム

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