音楽の変化に見る原発への考え 『原発列島にっぽん』

神田小川町のNEONEO座で、原発についての広報映画を見るが、その音楽の変化に製作者たちの原発への考え方が現れているように見えた。
『美浜のあけぼの』『よみがえる砂丘』『北薩に築く』『アキラ君の夢』、さらに1994年の日立製品のPR映画の『日立は今』。

『美浜のあけぼの』は、言うまでもなく関電の美浜原子力発電所の建設記録で、1969年、翌年の「大阪万博」を控え電力需要の増加に対応するための建設。
ここでの音楽は、脚本が大沼哲郎であり、バッハの『トッカータとフーガ』であるように、原子力を全面的には肯定していず、どこか疑問も感じられた。
それに対し、1985年の東電柏崎刈羽原発の記録『よみがえる砂丘』では、疑問は一切なく、当時流行の8ビートに乗って軽快に映画は進行する。まるで、原発推進は当然で、どこにも問題はないと言うように。
同じ年に作られた、九州電力の鹿児島県川内市に建設された川内原発の『北薩に築く』は、RKB映画社と九州のテレビ局の製作なので、音楽は最小限に控えられていた。
全体に構成は同じで、冒頭は日の出で始まり、郷土芸能や漁業、農業の様子が描写され、そこに土壌、地盤の調査がされ、まず強固な基盤が鉄とコンクリートで作られる。
原子炉容器が組み立てられ、内部の構造も作られる。
国の検査が終了し、自治体による監視で安全が確認され、地元の活性化が謳われて、エンド・マーク。

どこかの東電のPR施設用の映像らしい『アキラ君の夢』は、少年とアニメの電子の精、さらに先生の原田大二郎が、電力のベスト・ミックスを勉強すると言うものだが、その能天気さには、しばし笑い声があがる。

最後、日立製品全般のPRビデオ『日立は今』は、やたらとカタカナ語が連発されるもので参ったが、テクノ・ポップで処理されていた。

全体を見ると、どうやら当初はかなりおっかなびっくりだったが、すぐに当然のことになり、さらに最後は原発の問題点も課題も見失った、と言う日本の原発問題全般を反映しているのが、大変興味深かった。

これの前、神田神保町の「いにしえ文庫」に行き、岡田則夫さんにお会いし、11月末に図書館で行う「日本の音楽や芸能」についての講座について打ち合わせ。
超有人のレコードなど、珍しいものも紹介していただけそうなので、大変面白くなりそう。
これの前の11月初めには、北中正和さんと山岸伸一さんに、「世界と日本の音楽」についての講座も行うので、興味のある方は是非栄図書館に。

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