斉藤春子さんの地唄に感動する

国立劇場開場45周年記念の邦楽公演として、『上方の芸・江戸の芸』が行われた。
日本の三味線音楽には、物語ものの浄瑠璃系と唄ものがあり、浄瑠璃系は、常磐津、清元、富本、義太夫、さらに心内も本来語り物なのだそうだ。
唄は、長唄、荻江、端唄、うた沢、小唄などになるとのことだが、長唄を唄と言われても、江戸長唄の長編等は、物語を基にしていて語り物に見えてしまう。
解説の竹内道敬先生によっても、時代を経るにしたがって、両者は相互の良い部分を取り入れたので、区別がつかなくなっているそうだ。

11時半からの部では、まず常磐津で『朝比奈の吊狐』、宮園節『江戸の絵姿』、休憩後地唄の繁太夫物で『お房』、最後は清元の『貴撰』
この中では、宮園と地歌が唄物になり、宮園はしっとりとした静かな情緒で、永井荷風も愛でたものだ。
亡くなられた中村とうようさんが、レコードを作ったこともある、故桃山春枝さんも、確か宮園節から出た人だったことを思い出した。
同じ三味線でも、常磐津や清元の豪快で、派手な音と、宮園や地唄の静かな伴奏では、まったくの違いがある。

午後の部までの間は、国立芸能劇場ホールでやっていた『喜劇王展』を見に行く。
エノケン、ロッパ、歌笑、金五桜の4人の喜劇・爆笑王の展示で、三遊亭歌笑とロッパのCDを聴くが、実に面白い。

午後3時からは、河東節の『恋桜反魂香』、女性の義太夫で『心中天網島』、地唄『青葉』、最後は長唄の代表曲で、豪華絢爛たる大曲『安宅勧進帳』
竹本駒之助の義太夫も良かったが、なんと言っても素晴らしかったのは、地唄斉藤春子さんの『青葉』だった。
地唄は、本来お座敷芸だが、この『青葉』は、元禄時代の劇『関東小六今様姿』で唄われたものだそうだ。
斉藤春子さんの唄は、この日の唄も語りも全体に派手なものが多かったので、逆に光ったこともあるが、実に静で、細やかな表現が素晴らしかった。
地唄なんて、お座敷芸で、われわれに何の関係もないと思っていたが、このように感動できるとは、本当に驚いた。
国立小劇場

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