『重役の椅子』

川崎市民ミュージアムでは、このたび毎土・日・祝は必ず映画を上映することになり、今週から9月上旬まで「東宝のサラリーマン映画」として約30本が上映される。今日は、『三等重役』と『重役の椅子』で、『三等重役』は他愛のない喜劇(監督春原政久)だが、筧正典監督の『重役の椅子』は、なかなかのの佳作だった。
池部良がある会社の総務部次長で、総務部長が急死し、彼に愛人(淡路恵子)がいたことや、淡路の友人の団玲子との色恋沙汰があるが、最後は無事取締役総務部長になり、妻(杉葉子)とも仲良く行く、と言うものである。
当時、すでに太陽族映画があり、東宝でも筧と同期の堀川弘通、あるいは石原慎太郎自身が太陽族映画を撮っていて、この映画でも団玲子が肉体を池部に頻りに与えようとするあたりに出ている(団が歌声酒場で働いている設定も笑える)。しかし、東宝映画の良識の枠内で収まる。
そこが限界だが、別に考えれば後の森谷司郎の『兄貴の恋人』や出目昌伸の『俺たちの荒野』などにつながるセンスを感じた。
筧は、堀川と同期だが、黒澤の助監督だった堀川のようにエリートでも、またすぐ下の岡本喜八のようにユニークでもなかったが、なかなかの作品を作ったようだ。今回は、何本か上映されるので、是非見ておくことにする。
映画史的に見れば、筧のように大きな痕跡を残していないように見える作家も、後世の作家に有形無形の影響を与えていることが今日よく分かった。

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