『金色夜叉』


オペラシアターこんにやく座の公演を初めて見た。
こんにやく座は、以前からよく知っていたが、どことなく民青歌声的感じがして見なかったのだが、今回の公演はまったくそんな匂いはなかった。
『金色夜叉』は、尾崎紅葉の小説で、芝居や映画の他、コントでも有名で、「熱海の海岸」のシーンは、誰でも見たことがあるに違いない。
戦前の漫才では、ミス・ワカナが、『熱海の海岸』を中国語にして歌う有名な十八番があり、多くのCDに収録されている。

だが、あれは物語の発端にすぎず、その後も延々と話は続き、1970年代に新派の水谷八重子(初代)と中村吉右衛門で見たときは、その後恋に敗れた間貫一が高利貸しになり悪どい取立てで、借手の老婆に屋敷を放火されるところで終わりだった。
数年前にフィルムセンターで見たサイレント時代の野村芳亭監督、林長二郎(長谷川一夫)・田中絹代主演映画では、さらに間貫一の友人で官僚となった荒尾と共に、金貸業を反省して福祉事業を起こすところでエンドだった。
今回のは、さらに続くのだが、いずれにしても『金色夜叉』は、作者の尾崎紅葉が死んだため、未完となっているのである。
筋は、「カネとイロ」で、これは古今東西の演劇の常道であり、どこまで行っても対立が尽きることはない。

オペラシアターなので、劇の半分以上が歌われるが、おかしさはない。
作曲は、萩京子だが、元々の代表者だった林光の音楽に似た感じがあり、大変良かった。
1970年代に、林光が音楽をやった、黒テント・演劇センターの、『阿部定の犬』等の佐藤信作・演出の『喜劇昭和の世界』を思い出した。
『喜劇昭和の世界』の最終作『ブランキ殺し』のとき、林光は一人でピアノを弾いたが、ここでも服部真理子一人のピアノで劇を展開させた。
世田谷パブリック・シアター

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする