『女賭博師・みだれ壺』


日本映画専門チャンネルの『女賭博師劇場』も、ずっと見ていたが、いつも同じなので飽きて来て、このところ録画していなかった。
だが、土曜日の朝に偶然見初めた『みだれ壺』は、その技の荒唐無稽さにあっと驚く作品だった。
花札勝負の「はんがん」という意味がよくわからないが、花札を開ける時に、相手に投げ、同時に手を叫ぶ。
まるで銭形平次の投げ銭である。

冒頭のだるま大師での勝負に、江波杏子が負ける名人「はんがんの友造」が、長門勇でこれが実に良い。
彼いわく、同じショバに3日といない風来坊で、どちら側にも付かない中立的で博奕の名人。
多分、友造の設定は、長門勇自身の語りで映画を進行させた、『乱れ壺』の半年前の1969年春に池広一夫監督、市川雷蔵主演のヤクザ映画の最高峰『ひとり狼』の木曽の伊佐蔵から作ったキャラクターのように思えた。

江波の大滝銀子と戦う、チンピラ賭博師の安田道代はチャイナ・ドレスで、長谷川待子は頭を丸めた尼僧姿だが、これは彼女によく似合う。
そして、安田道代の母親は、昔は大阪の女賭博師で、銀子が悪漢に絡まれたときに救ってくれた浪花千恵子の娘、という一種の母物の仕掛けが組み込まれている。
この辺りの構造は、さすがにベテラン監督田中重雄で、大変上手く出来ている。
善玉の親分は、柳永二郎、悪玉は小松方正で、これらは、乱れたどころか、大変ツボにはまった演技を見せる。
音楽は、鏑木創で、最後の勝負では、長門の耳が良くない設定なので、ときに現代音楽風の不協和音を響かせていた。

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