『黄昏のチャイナタウン』

前作のポランスキー監督,ジャック・ニコルソン主演の『チャイナタウン』の続編で、いろいろな経過があり、ニコルソン自身が監督をしている。
時代は、1948年のロスアンゼルス、雰囲気と作品の流れ方は快いが、話はよく分からない。
やはり、ニコルソンには、映画を客観的に見る能力がなかったのだろうか。

ロスの石油成金、不動産売買、不倫をめぐるスキャンダル等が出てくるが、結局のところ最後の謎解きはなく、筋はよくわからない。
どうやら、前作の主演のフェイ・ダナウェイの娘が、ハーヴェイ・カイテルの妻になっているらしい。

だが、この設定はわれわれアジア人には、愉快ではない。
なぜなら、フェイ・ダナウェイと父親のジョン・ヒューストンは、近親相姦で、そのために技術者だったフェイの夫は殺されたのである。
そして、こうした「父娘の近親相姦は、中国人や日本人等のアジア人の社会では普通のこととして行われている」との隠れた意味が『チャイナタウン』という題名にはある。
アメリカ人の人種的偏見というしかない。

さて、この作品の重要な小道具として録音機が出てくる。
モーテルでのセックスを延々と再生するなど趣味の悪い使われ方だが、これはテープレコーダーではなく、ワイヤーレコーダーである。
ワイヤーレコーダーとは、テープレコーダーの発明以前に広く使われていた機種。

初め、1948年なので、あるいはテープレコーダーがすでにアメリカで実用化されていたのかと思ったが、そうではなかった。
テープレコーダーは、戦時中にナチスドイツが発明したもので、複数の場所で同時に行うヒットラーの演説等に使用された。

だから、アメリカでテープレコーダーが使われるようになるのは、戦後のことで、それまではワイヤーレコーダーかディスク式録音機だったのである。
映画に出てきたのは、本物のワイヤーレコーダーで、ワイヤーの進行方向が右から左で、回り方も右回りになっている。
後のテープレコーダーとは逆の回り方、進行方向である。
こういう機種もあったのか、と大変感心した。

勿論、映画には全く感心しなかったが。
ザ・シネマ 24時間サスペンス映画特集

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする