『愛と死のかたみ』

浅丘ルリ子と長門裕之主演で作られた死刑囚と結婚する女性の話で、実話である。
監督は、小林旭の「渡り鳥シリーズ」で有名な斎藤武市だが、斎藤はもともと松竹大船で小津安二郎の助監督をしたこともあり、抒情的なのである。

福井で保険会社に勤める浅丘は、教会の信者で、そこで見たパンフレットで福岡刑務所に服役している死刑囚長門裕之を知り、文通するようになる。
浅丘の家は、父が戦争で死んだため、母親(高野由実)と姉たちとも別々に生活するようになっていた孤独な少女である。
そこに老舗の店の息子波多野憲から結婚を申し込まれるが、死刑囚と文通していることで破談になり、浅丘の心は、さらに長門に傾いいていき、実際に面会して、浅丘は長門を好きになる。
長門は、長崎に生まれたが、原爆で両親が死に、施設で育ったが、次第にぐれて、元父親の関係者で成功した海運会社の社長金子信雄と妻を殺し、強盗殺人で死刑囚になった。
浅丘は、長門の不幸な生い立ちに「自分よりも不幸な人がいる」と初めは同情したのだが、それは強い愛情に変わり、ついには獄中結婚するまでに至る。

その脚本の運びに無理がなく、獄中結婚という異常な事態が十分に納得できるシナリオ(棚田五郎)になっている。
脇役も、大坂志郎、滝沢修、高野由実、永井智雄、金子信雄とベテランを揃えている。

勿論、最後浅丘が福岡に引っ越すための荷造りをしているところに、「今日天に召された」との電報が届く。
1962年、日活が一番力があった頃の秀作である。
チャンネルNECO

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする