『対決』

藤巻潤主演作で、こんなに良いのがあるとは知らなかった。
1963年の安田公義監督作品、藤巻潤と対立する剣士は小林勝彦、道場の師匠は島田竜三。
藤巻と結ばれる端女は藤村志保で、島田の娘は稲垣美穂子だが、全体に地味な作品。
市川雷蔵主演の『手討』の併映、つまり添え物だったのだが、それでもこの水準だったのだ。
全体の感じとしては、森一生の名作『薄桜記』に似ている。

島田が、藤巻と藤村の仲を疑い、藤巻と小林を戦わせ、「勝った方に稲垣美穂子を上げる」と言う。
藤巻はわざと負け、それを見抜いた島田に藤巻は、両眼を切られて盲目になってしまう。
木曾の山に藤村志保と篭もった藤巻は、秘剣を編み出し、一人で道場に乗り込み島田を一撃で切り殺し、小林の左腕を切り落としてしまう。
この剣が不思議なもので、剣を土に垂直に立て、一気に逆手で斬る、というものである。

最後は、小林を擁護する掛川藩と、藤巻を守る駿府藩との対立になる。
この辺は、荒木又右衛門と似ているが、藩と藩の意地を掛けた対立である。
最後は、書かないがやや拍子抜けであった。

安田公義は、娯楽映画の御用監督だと思っていたが、ある日安田道代主演の1966年の映画『殺人者』を見て驚いた。
大変良い出来だったのである。
安田は、戦前日活で稲垣浩の助監督だった人で、リズム感が良く、画面も良いのだ。
それもそのはず、この人は、美術学校の出身だった。
『座頭市』や『眠狂四郎』などでも、いつも手堅い出来の作品を作った人だった。
日本映画専門チャンネル

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コメント

  1. ウィーダ より:

    Unknown
    あんた、「欧米人コンプレックス」なんじゃないの?邦画一辺倒なとこからすると?
    洋画崇拝者な私でも市川雷蔵の「ある殺し屋」と小津、黒澤、成瀬、お気に入りなんだけどね。
    まぁお偉いあんたから見たら「邪道でセンスなし」とでも言いたいんじゃない?

    ※あ、ちなみに私オッサンよりはるかに若いから、耳も目も異常なし。

  2. さすらい日乗 より:

    本当に理解しているのか疑問があるので
    外国映画の場合、結局のところ私たちは、本当にその作品をきちんと理解しているのか疑問があることが多いので、ここに書かないのです。人並みには見ていますが。
    制作された時代背景、社会、作者たちの立場がきちんと理解しているのか分からないのです。
    さらに、最近は少ないが、外国映画の場合、配給会社が勝手に作品を短縮することもあるので、その意味でも本当に理解しているのかはよくわからないのです。