反米エロ映画 『戦後残酷物語』

世に映画の数は多いが、これほどモロに反アメリカを打ち出した作品もないだろう。
しかも、それが大エロ映画なのである。

敗戦直後の京都から始まる。
空襲で家族を失い、東京で焼け出された小野年子の路加奈子は、京都の親戚の家に住み、会社で働いている。
ある夜、警官が来て「進駐軍の物資の横流しの疑い」と言われ拘引され、進駐軍のジープに乗せられる。
職場で、闇物資のタバコとストッキングを買ったことがあるので、それかと思うと、何んとジープは山中に行き、そこで3人の米兵に強姦されてしまう。

東京に逃げて来た路加奈子は、町のパンパン狩りに間違えられて会い、警察の留置所に入れられてしまう。
この時のパンパンの親分格が、なんと李礼仙で、彼女はきちんと台詞を与えられた役だが、警官約にはヒゲ面の斉藤晴彦が出ていたが、ただのエキストラ。
病院で検査されて、性病に罹っていることが判明する。

そして、李礼仙以下のパンパンは、基地繁栄の噂で、青森の三沢基地に行くことにして、病院を去る。
すると、そこに約50人の米兵が隊列を組んで病院を襲い、入院患者、看護婦、事務員の区別なく女性全員を襲ってレイプしてしまう。
これには、「いくらなんでも、そんなことはあったかな」と唖然とした。

三沢で、素人だった民子は、次第に米兵相手の娼婦として上達し、一人の若い兵隊から「自分だけのものになってくれ」と頼まれて、オンリーになる。
夢のような生活。
だが、それはすぐに消えてしまう。
兵隊は、彼の上司から多額の借金をしていて、兵隊が死ぬと「そのかただ」として、年子は家から追い出されて、上司と情婦のものにされてしまう。
怒りと絶望で、民子は、上司と情婦を拳銃で殺す。
すると、家の床に、日本列島の形をした米があり、それを殺された二人が流す血が黒く染めてゆく。
そして、民子は北の海に裸で入水して死ぬ。
彼女は、「アメリカを、そして自分を騙した日本人の警官を恨んで死んだのだ」とのナレーションンが荘重に流されてエンド・マーク

知人の武智鉄二映画についての感想では、「武智は裸の女が走るのが好き」とのことだが、ここでも裸の路加奈子が森を走るシーンがある。
路加奈子は、よく見ると酒井和歌子に似た美人だが、彼女は非常に演技が不思議で、異常な大げささを感じるところがある。

また、音楽が西辺竜となっているが、現代音楽風のレベルの高いものなので、誰かの変名なのだろうか。
スタッフの名前に変名を使う程度に、武智鉄二映画は、係わることが忌避されるものだったということだろうか。

原作が、トンデモ本の元祖『ノストラダムスの大予言』の五島勉なのだから、筋はほとんどでたらめだと思う。
小野年子が、三沢基地では、米兵の日本人女性狩りに手を貸すなど、アメリカからの被害者が加害者になると言うのは、反米民族主義者武智鉄二らしい皮肉で、戦後の日本は、そのものだろうと言っているように見える。
確かにそれに間違いないところはあるが。
シネマ・ヴェーラ

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