『赤い陣羽織』

フィルム・センターの「発掘された映画たち2005」で山本薩夫の『赤い陣羽織』を見た。この映画は見たことがなく、上映された記憶もないのは、国産カラーのテスト版で、プリント状態がよくなかったためらしい。今回、新たに復元された。
原作は木下順二、欧州劇の翻案の寓話劇である。主演中村勘三郎で、歌舞伎でやっている。
勘三郎は、意外と映画が少なく、この他木下恵介の『今日もまたかくてありなん』、豊田四郎の『四谷怪談』、それに歌人吉野秀雄を主人公にした『わが恋わが歌』のみ。
資料には歌舞伎座映画となっていたが、タイトルでは歌舞伎座株式会社。
この後、歌舞伎座映画ができ、松竹の傍系会社として、失業左翼映画人を使って時代劇等を作った。
ここでも、主演の伊藤雄之助は別として、三島雅夫、多々良純、井上昭文、陶隆、福原秀雄、島田屯、戸田春子らおなじみの左翼映画・演劇人が多数出演。
岩崎加根子や市原悦子もタイトルにあるが、村祭りの夜のフリー・セックスのシーンに出たらしく、そこはコニカラーのテストで、「ツブシ」が上手くいっていなくて真っ暗で、誰か不明だった。
貧民・伊藤の美人妻が有馬稲子、勘三郎の良妻賢母が香川京子の豪華キャスト。

山本薩夫にとっては、初めての本格的時代劇(『箱根風雲録』もあるが)で、後の『忍びの者』につながり、権力者を描く点で『白い巨塔』や『不毛地帯』につながる作品である。
大木正夫の荘重な音楽(行進曲)が滑稽。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする